三つの「脳」を使い分ける 後編

こんばんは(^O^)/

今日は前回に引き続き、三つの脳力を使い分ける具体的な方法について考えてみたいと思います。

前回は洋裁の仕事を3つの要素に分け、それぞれに必要な3つの能力(脳力)を対応させてみました。

  • デザイン → 芸術脳
  • パターンメイキング → 論理脳
  • 縫製 → ロボット脳

それぞれの脳を使い分けることで、パフォーマンスを高め、作業の質を向上できるのではないか、というのが前回のお話でした。

それでは今日は「脳を使い分ける」という具体的な方法と、それぞれの能力(脳力)を高めるためのトレーニングやアイディアなどをご紹介していこうと思います。

 

1.芸術脳を鍛える

これは「右脳」がつかさどる領域と言われています。
視覚、聴覚など「五感」から入っている情報を瞬時に処理したり、イメージやひらめきなどを生み出します。また、感情の高まりや心の動きが動機付けとなり、独自のアイディアやデザインが生み出されたりします。

私はこの芸術脳の働きを低下させる2つの原因があると考えます。

①無感情

これは簡単に言うと、綺麗な花を見ても、美しい音楽を聴いても「何も感じない」という心の状態です。
重い症状になると専門的には「失感情症」というそうですが、そこまでではなくても、近頃何に対してもあまり感動しなくなってきた、という場合もこれにあてはまります。

②心のブレーキ

これは①とは違い、自分の中にちゃんとイメージが沸いているのに、それを自分で打ち消してしまう事。「他人がみたらどう思うだろう?」「自分には才能がない」と自分でブレーキを踏んでしまう事です。

 

ではこの二つの原因を取り除くにはどうしたら良いのでしょうか。

 

<瞑想・マインドフルネス>

五感の刺激に対して無反応になってしまう原因のひとつには、「世の中の情報が多すぎる」という事が挙げられます。

身近な例としては、子どもの頃、お母さんが作ってくれた手作りのおやつがあんなに美味しいと感じたのに、いまでは有名店の高級スイーツを食べても大して感動しなくなっている、なんていう事ありませんか?

食べ物に限らず、世の中は物や刺激で溢れていて、それに慣れてしまっている事が「感動しない」原因のひとつでもあります。

そういう意味で意識的に「何もしない」時間を作り、自分の内側をリセットする事はとても大切です。

また加齢による脳の機能低下が瞑想によって防ぐことができる、というカリフォルニア大学の研究報告もあります。

瞑想やマインドフルネスは特別な道具も準備もなく、すぐ始められます。

また、もっと詳しく知りたい、という方には関連する書籍も多数出版されています。

私も過去の投稿でちょっと変わった瞑想空間について書いていますので、よかったらこちらもご覧ください。

 

<ウォーキング>

ウォーキングが健康に良い事は知られていますが、実は脳の働きを高める、という事も最近の研究で明らかになっています。

それは着地の時の物理的な振動が頭部への適度な刺激となり、脳機能を高める効果につながる、という事なんです。

特に自然や緑の中を散歩すると、ストレス解消になる事も知られていますよね。

また、以前ご紹介したジュリア・キャメロン氏も自身の著作で「アーティスト・デート」として紹介している方法があります。

それは1週間に一回、街の中や珍しいお店、行ったこと事の無い場所を散策する事で、イマジネーションや直感が鍛えられる、というものです。

今コロナの世の中で「ステイホーム」が求められていますが、人との接触を避け、自分ひとりのウォーキングを楽しむ事は決して悪い事ではありません。

ぜひ実践してみてください。

 

<自己肯定感>

自分のありのままを受け入れ肯定する、という事は簡単ではありません。

最近、有名人の俳句や絵画などをランク付けするテレビ番組が人気ですね。

ファッションアドバイザーが芸能人の私服を批評する、という番組もありました。

私は個人的にはあまり好きではありません。

芸術性が高いとか低いとか、そもそも芸術に絶対的な基準など無く、人間が作った枠に当てはめて一個人が評価すべきことなのか疑問です。

日本人は特に同調圧力が強い傾向があり、人と違った感性を尊重できない傾向があるように思います。

他方、知的障害を持った方たちのアート作品をご覧になった事がありますか?

作者の内側から発せられるピュアなイマジネーションがそのまま作品となっていて、そのエネルギーに圧倒されます。

世間の反応とか、他人の評価とか・・・そんな事を全く意識することなく、これほど人を感動させる事ができるのですね。

自己表現は100人いたら100通りあって良いのです。

自分は常に自分自身を肯定し、他人も尊重できる、そんな世の中だったら素敵ですね。

 

 

2.論理脳を鍛える

これには主に「左脳」の働きが関係していると言われています。
「ちょっと自信ないなぁ」という方もいらっしゃると思います。
これは理論上は「芸術脳」と反対の働きですから、感情を高めたり、五感を刺激したりする事は逆効果です。
また、日常生活でちょっとした事に気を付けるだけで、論理脳のパフォーマンスを高める事ができます。

 

<部屋を片付ける>

「片づける」という行為はそれ自体が脳のウォーミングアップになる、という効果があります。

また散らかった部屋では視覚情報が多すぎて、集中力が低下してしまいます。

そのためにも部屋に色々な物を置かない、目に入らないように整理整頓する事がとても大切です。

クリエイティブディレクターの佐藤可士和さんが自身の著書「佐藤可士和の超整理術」で情報や思考を整理する重要性を説いていますが、自分のオフィスでは書類などは全て同じ色、形のケースに収納しているそうです。

視覚的な統一感はそれだけでも脳内が整理され、集中力を高めるのに役立つのです。

洋裁はとかく材料や道具が散乱しがちですが、常に整理整頓を心掛けたいですね。

 

<手書き>

「手書きで字を書く」という行為は脳を活性化させる、という最近の研究データがあります。

最近は文章を書くのはパソコンやスマホ入力が一般的です。音声入力という便利なツールもありますね。

けれど「手書き」には言語能力だけでなく、発想力、記憶力など脳に多大なメリットがある事がわかってきました。

また、先述したジュリア・キャメロン氏の「ずっとやりたかったことを、やりなさい」という本で「モーニングページ」というメソッドが紹介されています。

毎朝3ページの手書き日記を書く、というもの。

自分の頭や感情の整理にもなるし、想像力も高まる、という一石二鳥の方法です。

私は3ページも書きませんし、毎朝でもありませんが、マイペースで続けています。

もちろん日記でなくても写経でも良いし、覚書きノートでも構いません。

要は「手書きする事」なので、自分に合ったスタイルで習慣にしてみることをおすすめします。

 

<午前中に>

論理的な仕事は脳が疲れていてはパフォーマンスは上がりません。

できれば午前中に済ませてしまいましょう。

また、意識的に休憩時間を設けることで、脳のパフォーマンスがある程度回復する事がわかっています。

集中力の持続時間は人によって差があると思いますが、90分を目安に意識的に休憩を取るのがおすすめです。

 

<試験を受けている状態を作る>

医学博士で脳神経外科の専門医の築山節氏が自身の著書で集中力を高める生活習慣として提唱されている方法です。

「試験を受けている状態」とは仕事や勉強などをする際に意図的に制限時間を設け、いわゆるプレッシャーを与えて脳の回転数を上げさせた状態です。

時間があるから、と毎日を漫然と過ごしていると、脳の活動量がどんどん減少してしまいます。

つまり脳を怠けさせておいてはいけない、という事。

一日のうちに何度かこのような時間の制約の中で仕事や作業をする事を習慣化すれば、集中力が身に付き、脳も若々しさを保つことができ、しかも時間を有効に使うことが出来る、という一石三鳥のメソッドなのです。

 

 

3.ロボット脳を鍛える

縫製には多くの作業工程があり、それを正確無比に行うことが要求されます。

実際、はたから見たら「なんて面倒な!」と思うような事の連続ですよね?

集中力や忍耐力も必要です。

こんな時、ロボットの助手がいたらどんなに楽だろう、って思いませんか?

でも、ロボットはいなくても、ロボットの「脳」なら真似する事ができます。

 

<感情を揺らさない>

ロボットには感情がありません。

プログラムされた課題を淡々と、しかも正確にこなします。

人間が同じようにしようと思った時、ブレーキをかけるのがこの「感情」です。

ネガティブな感情はもちろん持たない方が良いのですが、逆に「嬉しい」「楽しい」という感情も緻密な作業には必要ない、というのが私の考えです。

いわゆる「平常心」です。

感情のコントロールというのは難しい事ですが、「ロボットに徹する」という気持ちを持つだけでもかなり変わってくると思います。

また「芸術脳を鍛える」の項でご紹介した瞑想やマインドフルネス。これが逆に「ロボット脳」を鍛える事にも有効なのです。

 

<一点凝視法>

これは記憶に基づいたプレゼンテーションなどを提唱している高嶌幸広(たかしまゆきひろ)氏が自身の著書で集中力を高める方法として紹介していたメソッドで、元は速読法の第一人者である佐々木豊文氏が考案したものだそうです。

やり方は目の前に一つの黒点をイメージし(あるいは実際に紙に描く)、それをひたすら見つめる、という方法です。

具体的にはいくつかの点を一つに付き3秒見つめ、次の点に移動してまた3秒、というように視点を移しながら、最初は1分、慣れたら5分続けます。

簡単で場所を選ばず、仕事の前に行うと集中力を高めてくれる効果的な方法です。

 

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今日は三つの脳を使い分けるためにそれぞれの脳力を鍛える具体的な方法をご紹介してきました。

これらは私が今までに読んだ本の中で紹介されており、実際に私が実践して「効果があるのではないか」と思う物について取り上げてみました。

人によって効果には個人差があるかもしれませんが、興味のある方はぜひお試しください。

皆さまの洋裁ライフに少しでも役立つ事を願っています♪

 

それではまた~(^^)/

 

 

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