こんばんはー(^^)/
この仕事を結構長く続けていますが、これまでに色々な事がありました。
独立したばかりの頃は人間的にも技術的にも未熟でしたから、とにかく経験値を増やす事を第一に考えました。
そのために、当初自分に2つのルールを課しました。
2.一般的なオーダー料金の1/3の料金でやる
宣伝チラシも自分で作り、近隣の家々にポスティングしました。
ちなみに、その頃のお客様で今でもオーダーを頂いているお得意様が何人もいらっしゃいます。
本当に有難い事です。
ところで、この独立したばかりの頃は、知識も経験も浅く、しかも自分に課したとは言え、あの2つのルールには苦しめられました(笑)。
エネルギーだけは人一倍でしたが、今思えば何とも無謀な、というような仕事ぶり・・・
しかもそのころは二人の子育て真っ最中。
毎日バタバタとあわただしい毎日を過ごしていました。
あの頃は失敗もずいぶん経験しました。
その中でも、今思い返しても冷汗がでるような大失敗があります。
独立してまだ数年の頃。
黒カシミアのオーバーコートのご注文でした。
カシミアのような毛並みのある生地は全てのパーツの毛並みを「並み毛」か「逆毛(さかげ)」かに統一しなければなりません。
それは毛並みの方向によって光の反射が全く異なり、並み毛では白っぽく、逆毛では黒っぽく見えるため。
黒のカシミアなら、より深い色に見える逆毛にするのが一般的です。
当時の私ももちろんそんなことは知っていましたし、カシミアだって初めてではありませんでした。
慎重に毛並みを確認しながら裁断を進めました。
その時は生地が要尺ギリギリで、型入れが少し難しい状況だった事が災いしました。
事もあろうか、最後の最後で、右手の外袖1枚だけ、毛並みを間違えて裁断してしまったのです。
並べて見ても毛並みの違いは歴然です。
でも裁ち直すほどの生地はもう余っていません。
買い足そうにも、これは何年も前に買った物。
買った店に同じ生地があろうはずもありません。
さあ、どうしよう・・・
でもこんな考えもありました。
黒のカシミアならどこかの店に同じような生地があるかもしれない。
袖分だけ買い足せばなんとかなるんじゃないか?
吉祥寺、新宿、渋谷、日暮里繊維街・・・生地店を片っ端から探しました。
黒のカシミアは比較的どこの店でもありましたが、同じように見える生地、というのはなかなか見つかりません。
「黒」と言っても濃淡色々あります。
生地の厚みや毛足の長さ。
全てが同じような生地、となると本当に無いんです。
「似ているな」と思っても、元々の生地と並べて見ると、やはり違和感を感じてしまいます。
袖分だけ買い足すなんて都合のいい事が無理なのだと悟りました。
もう残された手段は一つしかありませんでした。
・・・生地を丸ごと買い直す・・・
カシミアは言わずと知れた高級素材。
コート一着分を買い直せば、利益はほぼゼロ。
それでも他に方法はありません。
かくして私は日暮里でコート一着分(もしものために多めに)を買い、何とかカシミアコートの納品にこぎつけたのでした。
何とも高い勉強代を払ったものです。
この経験があってから、私は裁断には特別な注意を払うようになりました。
ちなみに私が普段裁断で注意しているのはざっと以下のような事です。
- 生地の表裏、毛並みの方向、柄の方向、傷の有無などを入念にチェックし、1枚ずつ確認。
- パターンの型入れ指示図を作り、プリントアウトして裁断台の前に貼っておく。
- 裁断が済んだパーツはパターンにその都度チェックを入れる(表地、裏地、それぞれ)。
- 裁断済みの生地には「表裏の印」「合印」を必ず入れる。
- 他のパーツと形の区別がつきにくい物は「パーツ名」「中心」「脇」「上下」などをふせんに書き、安全ピンで留めておく。
これらは「わかっているつもり」でも必ずやります。
「当たり前の事をやり続けるのがプロ!」
なんだかNHKの「プロフェッショナル」で聞いたような気がしますが(笑)。。。
それから私がおすすめしたいのは「失敗ノート」です。
洋裁を習っている方は覚書きのような洋裁ノートをつけている方も多いと思います。
それはそれで大切な事です。
でも失敗した事は、しばらくは覚えていても、時間が経つと忘れてしまうものです。
どんな時にどんな事で失敗したのか、それを記録しておくのも大事な事です。
そして、「今度同じ失敗をしないためにどうすれば良いか」も必ず書いておきます。
失敗の原因を分析し、解決策を自分で考えるのです。
こうすることで自分に苦手意識を植え付けず、失敗をポジティブな経験に転換することができます。
こういう地道な事の一つ一つが洋裁の腕を上げるのにきっと役立つはずです。
参考になさって頂けると嬉しいです(*^-^*)