こんばんは~(^^)
洋服やファッションの好みって、人それぞれ、実に多種多様ですね。
人は黙って歩いていても、その人が着ている服装や持ち物から、ある種の人間性を判断し、されている、と言っても過言ではないでしょう。
私は職業柄、人の服装を観察する癖がありますが、同時にその人がなぜその服をチョイスしたのか、あれこれ想像を巡らしたりもします。
花柄の服を好む人、キラキラしたひかりものが好きな人、モノトーンしか身に着けない人、天然素材にこだわる人、人と違う「唯一無二」をポリシーにしているような人・・・
身近な人を思い浮かべてみると、誰にでもその人なりのファッションの傾向があるように感じます。
一般的には外交的な性格の人は原色や派手なデザインの服を好み、内向的な人は暗い色や地味なテイストの服を選ぶと考えがちだと思いますが、実際はそう単純ではありません。
もっと根底にあるその人なりの価値観とか、自分自身をどうイメージしているか、というような深層心理が関係しているように思うのです。
Apple創業者のスティーブ・ジョブズの服装が、毎日同じリーバイスのジーンズと黒のハイネックだった、という超有名な話がありますね。
毎日の服装を選ぶ行為は彼にとって時間とエネルギーの無駄遣いだったのです。
けれどもっと興味深いのは、彼にとって、毎日違う服を着る必要性がなかった、という点です。
人は自分を表現する手段として服装を選びますが、自分の器よりはるかにたくさんの服を所有し、身に着けます。
それはある意味、自分をより大きく見せたい裏返しなのかもしれないし、生身の自分に足りない部分を服で補っているのかもしれません。
そう考えるとジョブズは自分の感性に絶対的な自信を持っていたからこそ、服装で自分を誇示する必要がなかったのではないか、と私は考えています。
最近は「超効率主義」というような考え方から、ジョブズのように毎日の服装を敢えて制服化するような人が増えてきたように思います。
トップスとボトムスの組み合わせを3パターンくらいに絞ってあらかじめ決めておき、毎日それをローテーションしていく、といった方法。
もちろん自分の服装をどうしようと本人の自由ですが、このような事を実践している人の中には、どこかうわべだけを真似た感がしないでもありません。
ジョブズのようなデキル人間に見られたい、という感じが拭えません。
自分を大きく見せたい、という点で、クジャクのように飾る人と大差ないように思ってしまうのは私だけでしょうか・・・
ところで、服は他人に自分を演出する手段としての面とは反対に、自分のための「セルフセラピー」としての働きもあります。
私のお得意様で持病のために一年中身体のむくみや冷えに悩まされている方がいらっしゃいます。
その方の口癖は「私にとっては服は自分の健康そのものなの」。
むくみのある箇所を圧迫しないゆとり量だったり、着丈の長さなど、ご自身の希望が明確にあります。生地は暖かくて裾さばきの良い物を、背中に当たる部分は布を二重に、などご自身の身体をケアするのに最適な服を自ら考え、オーダーしてくださいます。
また、20年以上も前になりますが、あるお客様から舞台衣装をオーダーして頂きました。大人になってからピアノを習い始め、初めての発表会とのこと。
弾かれる曲のタイトルが花の名前でした。生地選びにご一緒した日暮里で、ご自身が思い描いていた通りの、その花が描かれた生地に偶然出会ったのです。
決して上等な生地ではありませんでしたが「これにするわ!」と即決。
派手なドレスは苦手、とご要望通り、丸襟のブラウスとロングスカートのスーツにお仕立てしました。
「イメージ通りの生地とイメージ通りのブラウススーツ。衣装に力をもらいました!」と本番を終えたお客様から嬉しいお電話を頂いた事を今も思い出します。
服は自分を力づけたり、励ましたり、気分を̝高めてくれたり、そんな存在でもあります。
私のカジュアルブランド「Continuo」はイタリア語で「通奏低音」という意味の音楽用語です。
通奏低音のように自分を支え、寄り添ってくれる、そんな服作りを目指し、名付けました。
これからもこの想いを大切にし、後輩たちにも伝えていければ、とあらためて思います。