チャールズ国王と洋服

お久しぶりです(^^)

私はあまりテレビを見ないのですが、たまたま隣の部屋から聞こえてきたテレビ番組の音にちょっと興味を覚えました。

それは、イギリスのチャールズ国王が昔から環境問題に熱心に取り組んでおられ、自らも、洋服は何十年も大事に大事に着ていらっしゃる、という趣旨の話でした。

話につられて映像を見てみると、国王が身に着けている一見、質の良い高級そうなジャケットには、幾つも継ぎ当てがされ、衿は別布に取り換えられて、独特の味わいのあるものでした。

この事はほんの一例に過ぎませんが、イギリス国王(かつては皇太子)という身分の方が、「物を大事にする」行為を自ら実践されている姿は驚きです。

ダイアナさんの麗しいファッションばかりにフォーカスされていた時代から現在に至るまで、周りにどれほど変人扱いされようとも、チャールズさんが自らの信念を貫いてこられた事実は、少なくとも日本ではそれほど知られてはいなかったと思います。

失礼ながら、私はこの高貴なお方について今まで関心を持ったことがなかったのですが、特に「服を大事にする」という一点だけで、たちまち尊敬の念が湧いて来たのでした。

最近では若い世代の中ではファストファッションがスタンダードになり、1シーズンで使い捨てるのが普通の感覚になっているようにも見えます。
新しい服に対する欲望はエスカレートする一方のようです。

もっとも、最近は環境問題に配慮した素材・・・リサイクルによって作られた糸や布などを使った製品や、廃棄した時に有害な成分を出さないような素材など・・・が新しい付加価値を生み出しています。

もちろん、それはそれで素晴らしい事ではありますが、「良い物を長く使う」という価値観を見直すのも大切な事のように思います。

なぜか、「同じ服を着ているのは恥ずかしい」という感覚があります。
昔、世の中の皆が貧しく、物が無く、新しい服に対する憧れがあった時代の名残なのかもしれません。

でも、今の時代は価値観が多様化してきて、新しい服を着ているだけで憧れの存在になれるわけではありませんよね。
そういう意味で言えば、逆もまた真なり、です。
清潔で手入れされている服であれば、同じ服を着ている事は恥ずかしい事ではないはずです。

「むしろ良い服を大事に着ている人は素敵だ」という風潮になっていくのが理想です。

 

高校生の時、母が押し入れの整理をしている時、茶箱の中に母が昔着ていた古い上着を見つけました。
茶色のような黄土色のような、ヌバックのごわごわした衿無しの上っ張り。
クラシカルな革のボタンが付いただけのシンプルな服でした。

でも、私はこの古臭い上っ張りに、一瞬でとりこになりました。

「これ、ちょうだい!」

こんな古ぼけた服を欲しがる私に、母は驚きながらも、快く譲ってくれたのでした。

翌日から、私は毎日、この古臭い上っ張りを自慢げに学校に着て行きました。
(ちなみに私の通っていた高校は、学生運動の頃に先輩たちが「制服を着ても着なくても良い」という素晴らしい校則を勝ち取った学校でした。)

自信たっぷりに颯爽と羽織る私の姿を見て、同じ年頃の友達には、これが母のお下がりとは思わなかったようです。
「かっこいいね!」
そんな誉め言葉もお世辞ではなかったと思います。

それ以来、私は母の古着を漁るのが趣味になりました(^^♪

丁寧に仕立てられた昔の服は、独特の味わいがあります。
私が今仕立てている服やドレスは、何十年もたった時にどんな風になっているでしょうね。
次の世代の人たちにも「これ、着てみたい!」と思ってもらえているかしら。

時代や流行を超えて普遍的な価値というものは確かにあると思います。
チャールズ国王のように誰もができるわけではありませんが、少なくとも、長く使い続けたいと思ってもらえる、そんな服を作れたら幸せです(#^^#)

それではまた(^.^)/