工業用扁平縫いミシンの実力はさすがでした。
生地が変わると、まれに多少の目飛びはありましたが、前機種の時の悪戦苦闘が役に立って、なんとか対処もできました。
何より、「カバーステッチを攻略できた」という自信もつきました。
思えば私が求めていた物はこの「達成感」だったのかもしれません。
幸いにもオーダーメイドの仕事は順調で、時には合唱団の衣装などの大口の仕事もあり、忙しい日々が続きました。
ニットを縫うと言えば、時間がある時に自分の物を作る程度。
そのうちカバーステッチを使う事にある種の不便さも感じてきました。
というのも、扁平縫いミシン(カバーステッチミシン)は前にもお話した通り、一つの縫い方しかできません。
地縫いや縁かがりは別のミシンを使わなければいけないのです。
でも、糸は共有しますから、ミシンを変えるたびに糸を掛け替えないといけない。
これが実に面倒なのです。
ちなみにカバーステッチは「返し縫い」ができません。
ということは、縫い始めや縫い終わりの糸は放っておくとだんだん解けてきてしまいます。
それを避けるために、筒状の部分・・・衿ぐり、袖口、裾などは最後に丸く縫うのではなく、平らな状態でカバーステッチをかけておいて、その後に筒にするのです。
そうすると縫い始めと縫い終わりの部分は接ぎ合わされてロック始末されるので、解ける心配がない、というわけです。
ニット縫いの経験のある方でないと、ちょっと想像しにくいかもしれませんね^^;
ともかく、カバーステッチを使う時は、カバーステッチミシンと地縫いミシン、またはロックミシンを交互に使う事がたびたびあるわけなのです。
縫製工場のような既製服の現場なら、工程ごとの分業ですし、糸は十分に用意されています。
でも家庭では糸は最小限の数を買って、ミシンが変われば糸をかけ替えて兼用しますよね?
私はこれがだんだん煩わしくなってきました。
カバーステッチのためだけに60番のスパン糸を2本揃えなければならないのもネックになりました。
ちなみにカバーステッチの表に見えるダブルステッチの部分には60番のスパン糸を使わないといけません。
フィラメント糸だと目が飛んでしまうし、ロック用の90番だと弱いので糸切れしてしまうからです。
普段スパン糸をあまり使わない私にとってはそのためだけに糸を買うのは無駄に思えてしまいました。
とにかく、これが量産のためなら、ある程度のコストも手間も惜しくはありませんが、たまに私物を縫うためだけ、という人にとってはどうなんだろう?
という根本的な疑問が沸いてしまったのです。
工程にしても、ニット用のミシン糸を使って地縫いは直線ミシンでやり、縁かがりはロックミシンで。裾や袖口の始末は最後に・・・という慣れたやり方が自分には一番しっくり来るのです。
問題は仕上がりに伸縮性を持たせたい部分(衿ぐり、袖口、裾など)をどうするか?
そこだけでした。
ニット用の糸を使って普通にステッチで縫ってしまうと、糸の伸縮性は多少あるとはいえ、ほとんど伸びなくなってしまいます。
じゃあ、ステッチかけなきゃいいんじゃないの?
普通にロック始末して、まつり縫いしたらどうなんだろう?
糸をゆるくして、わたり幅を大きくしてあげれば、横伸びもするんじゃないかしら?
すぐに試してみました。
当然、表のダブルステッチはありませんが、裏も表もとてもスッキリ。
そして横伸びは・・・
カバーステッチより伸びるではありませんか!
なんだ!
これでよかったんじゃないの!
長い夢から覚めた瞬間でした。
***次回へつづく***
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