こんにちは~(^^)/
今までこのブログでは、「キッチン染め=なんちゃって草木染」を何度も取り上げてきました。
草木染の原料になりそうなコーヒー豆のカスやアボカドの皮を干したり、玉ねぎの皮を貯めこんだり・・・
ところがここ最近は熱意もちょっと落ち着き、仕事やもろもろの事情で、染色から遠ざかっていたのでした。
そんな折、先日着物リメイク用のパターンとサンプルを作る仕事のため、手持ちの着物ストックを物色していた時の事です。
ちょうど今の季節らしい、桜色の綸子の着物を見つけました。
作るアイテムが「ボータイブラウス」だったので、イメージ的にも合いそう。。。
というわけで、さっそく解き始めました。
解いた着物をあらためて見てみると、今さらながら、その色合いにちょっとだけ違和感を覚えました。
「何だか可愛すぎる・・・かな?」
そう、桜色のそれは、イノセントというか、清純というか。
ちょっと大人の色ではない気がしたのです。
「もうちょっと落ち着いたピンクだったらいいのに・・・」
そんな風に感じました。
でも他にそのような色の着物は見当たりません。
何とかしてこの桜色の着物の色味を「ちょっとだけ変える」方法はないだろうか?
頭をひねりました。
以前、草木染が得意な生徒さんに頂いた染料の中には、黄色系の物が何種類かありました。
黄色で染めれば、もしかしたらもう少しオレンジに近いピンクになるかしら・・・
でも、イメージ通りの色に仕上げるには、試作に時間がかかりそうです。
そこまで時間の余裕もありません。
また、化学染料では、しっかり染まりすぎて、せっかくのムラ染めの白部分まで染まってしまいそうです。
そこへ、ある考えが浮かびました。
「鉄媒染だけしてみたらどうだろう?」
草木染めではミョウバンを使ったアルミニウム媒染か、鉄媒染、銅媒染など、同じ染料でも媒染の種類で発色を変える事ができます。
私は、明るめの色合いにしたい時はアルミ媒染、暗めにしたい時は鉄媒染にしています。
まるっきり違う色にしたいなら染料は必要でしょう。
でも、ちょっとだけ今ある色のニュアンスを変えたい、というだけだったら、媒染だけでいけるんじゃない?
そう思ったのです。
というわけで、半幅のかけ衿部分で実験してみることにしました(^^)/
手作り媒染液ですから、希釈の割合も自己流です。
いつものように、3リットルのお湯(60℃くらい)に対して鉄媒染液は大さじ1。
温度が高すぎては色落ちし過ぎてしまったり、風合いが損なわれる恐れもあります。
媒染液の中で5分程度ゆらゆら泳がせ、その後、水洗い→柔軟剤→軽く脱水→アイロンドライ。
さて結果は、というと・・・
見事に予想的中でした!!
写真左が元の色。
右が鉄媒染液をかけた色。
本当に微妙な違いですが、これでぐっと大人ピンクになったと思いませんか?
思い描いた通りの結果に、気分も👍(^O^)/
残りのすべての生地を3回に分け、同じ条件で媒染処理をしていきました。
実験段階では、洗い上がった生地が少々「鉄臭い」感じがしたので、ごく薄い洗剤液で洗ってから、クエン酸を溶かした水にしばらく浸す、という処理を加えました。
結果臭いはすっかり取れ、しかもpHの関係か、生地に柔らかさが増しました!
こうして処理した生地で、縫いあげたブラウスがこちら。
お見せした方々の評判は上々でした♪
色を加工した話はしていないのに、「良い色ね~」と言って頂けたのは嬉しかったです!
隠れてガッツポーズをしていたのはナイショです(*^^)v
ところで手作り鉄媒染液についてですが、作り方は諸説あるようです。
私の経験から言うと、特にどんな作り方でもそれなりの物はできますし、特に難しい事は何もありません。
参考までに、私のやり方をご紹介しておきますね。
〈材料〉
- 錆びた鉄の木ネジ・・・160g(釘、ヘアピン等、鉄製品なら何でもOK)
- 食酢・・・300ml
- ステンレスボール(100均で購入。料理には使わない事)
- ガラス瓶(適当な空き瓶でOK)
〈作り方〉
- ボールに食酢と木ネジを入れ、とろ火にかける
- 軽い沸騰を5分続ける
- 火を止め、冷めるまで放置
- 上澄みを瓶に移す(濾せばなお良し)
- 1週間、できれば1ヶ月寝かしてから使う
火にかけたところ。食酢の量はボールの八分目くらいまでに。
軽い沸騰を続ける。火加減は最初から最後まで「とろ火」。
瓶に移したところ。この段階ではまだ薄茶色。
これは半年寝かしたもの。色は真っ黒に変化。
手順はいたって簡単ですが、「鉄クギを錆びさせる」のに、ちょっとコツが要ります。
というのも、ほとんどの鉄クギや木ネジは「防錆加工」がされているから。
最初にお湯で煮て、コーティングを落としてから、屋外に一定期間放置しておくと、ちゃんとサビてくれますよ。
ちまたには「食酢と水を混ぜる方法」、「煮ないで漬け込む方法」など、色々ありますが、どのやり方でもちゃんと媒染液はできます。
ただし、市販品と違って媒染液の濃度や鉄成分の含有量などは一定ではないので、使用する段階で様子を見ながら、希釈の割合を加減していく必要があります。
安い材料費と簡単な手間で出来ますので、ご興味のある方はトライしてみてください。
それではまた~(^O^)/