家庭用ミシンの課題

こんにちは!!

このブログを始めた時、私のミシンコレクション(笑)の話を少ししました。
現在アトリエには5台のミシンがあります。
でも普段の仕事で使うミシンはそう大して多くはありません。

仕事で必要なのは主に「縁かがり」と「直線縫い」。
これはロックミシンと工業ミシンを使います。
直線を縫わせたら工業ミシンのクオリティーは圧倒的!
職業ミシンもパワーこそ工業ミシンにはかないませんが、直線縫いの美しさは工業ミシンと肩を並べるほどの実力です。

一方、家庭用ミシンには実に様々な「模様縫い」機能があり、洋裁の楽しさを広げてくれます♪
これを全部使いこなしたらどんなに素敵な物ができるのかしら・・・と胸が膨らみます。

趣味で洋裁をされる方は、そんなに何台もミシンを使う人はいないでしょうから、一台で実用縫いと模様縫いができて、手頃な値段で買える家庭用ミシンを選ぶのは当然かもしれません。

しか~し!

家庭用ミシンって思うように縫えない事が多いですよね?

  • 薄地が縫えない
  • 厚地が縫えない
  • 段差で進まない
  • 上糸がつる
  • 下糸がぐちゃぐちゃになる
  • 生地が針板穴に引き込まれる

どうやっても糸調子が直らず、パニックに・・・
ああ、もうやーめたっ!

こんな経験ありませんか?
私もプロになる前はありました。

確かに家庭用ミシには限界もあります。
反面、進化している部分もあります。
オプション品やアタッチメントで補える部分もあります。

そこで私なりに家庭用ミシンの問題点と改善策を考えてみました。

ではそれぞれについて簡単に傾向と対策をご説明していきますね(^^)/

 

<1>下糸調子が調節できない

ミシンの糸調子とはざっくり言うと上糸と下糸のバランスです。
この両方を調節することで様々な生地や糸に合わせたきれいな縫いが出来るのです。

ところがご存じのように家庭用ミシンの下糸機構はほとんどが「水平釜」です。
ボビンケースを使わない仕組みのため、下糸の糸調子を調節することができません。
上糸のみで調節するしかないため、糸調子を合わせるのには限界があるのです。

これについては仕組みの問題なので、私たちにはどうする事もできません。
しかしながら、糸調子が良くない原因は他にもあり、次のような対策をすることで改善する場合があります。

針を交換する

厚地、薄地の場合、生地の厚さに見合った太さの針に交換するだけで糸調子が改善される可能性があります。
特に厚地の場合には効果が期待できます。
多くの方は厚地といえば14番の針をお使いになっていると思いますが、家庭用の針でも16番、18番まであります。
18番は相当太いですので、ジーンズや皮革など、用途は限られます。
とりあえず16番の針でお試しになってください。

糸を交換する

薄地の場合、上糸が強すぎてうまく縫えない場合が多いのですが、この場合糸を変えてみる事で改善が期待できます。

※普通地用60番の糸を薄地用90番の糸に変える。
※スパン糸をフィラメント糸(テトロン糸)に変える。

スパン糸、フィラメント糸、どちらもポリエステル糸ですが、糸の構造が違います。
詳しい解説は省きますが、フィラメント糸は表面がなめらかで、ある程度伸縮性があります。
「上糸がつってしまう」という時にフィラメント糸に変えてみる事で改善が期待できます。
ただしここでご注意頂きたいのは、家庭用フィラメント糸で手に入りやすいフジックスの「ファイン」。
こちらは絹糸を模して作られた糸なのですが、伸縮性が低く、かえって上糸がつってしまう事があります。
フィラメント糸でおすすめなのは工業糸の「エースクラウン」や「ミレーヌ」です。
ただしミレーヌは家庭用の小巻が存在しませんし、エースクラウンは小巻もありますが、入手しにくいのです。
エースクラウンの小巻を置いているのは、実店舗では新宿オカダヤさん。
ネットショップでは糸工房さんで手に入ります。

比較的入手しやすい糸としては、「ダルマロフティ」もおススメです。
スパン糸とフィラメント糸の中間のような糸で、手触り、強度、光沢など、家庭用の糸としてはかなり良いと思います。

 

 

<2>布送りが安定しない

家庭用と工業用(職業用)では送り歯の構造が違います。
簡単に言うと家庭用では送り歯が「楕円」の軌道なのに対し、工業用の軌道は「長方形」。
送り歯と生地の接地面積が工業用の方が大きいので、布送りが安定するのです。
縫った時の感触を表現するなら工業用が「自動車」、家庭用が「自転車」という感じ。
アトリエに来る生徒さんが一様に工業ミシンの縫い心地に驚きます。

この工業用の送り歯機構を「BOX送り」というのですが、ご興味のある方は調べてみてください。

家庭用ミシンでもこの「BOX送り」を採用しているのがJUKIの比較的新しいタイプのミシンです。
ミシンの買い替えをお考えの方は機種選びのポイントにして頂くと良いと思います。

 

現在お使いのミシンで布送りのトラブルを軽減するアイディアもあります。

こちらは私が手作りしているミシン定規です。
#400の布ヤスリを細長くカットした物で、写真の物は物差し代わりにもなるように加工してあります。
使い方は、この定規を生地と押さえの間に挟んで縫うだけです。

こうすることで縫い始めや縫い終わり、段差、伸びる生地などもスムーズに送ってくれるようになります。
簡単なのでぜひお試しください!

追記
こちらのミシン定規は手作り品をメルカリで販売しています。
アプリ内で「目盛り付きミシン定規」と検索して頂きますと商品ページが表示されます。
なお、売り切れの際はご容赦ください。

 

またニットや厚地の布送りを劇的に良くしてくれるアタッチメントもあります。
それが「フォーキングフット」です。

写真は私が職業用ミシンに取り付けて使っている物です。
通常のミシンは布の下側から送り歯で布を送りますが、上側から布を送る仕組みがありません。
そこでこのアタッチメントを使うと、布を上からも送ってくれるので、布送りがとっても安定します。
厚地の縫いズレやニットの伸びも防いでくれる優れものなんです。
厚地やニットをよく使われる方はぜひ使ってみて頂きたいアイテムです!

※フォーキングフットは職業用、家庭用、5mm用、7mm用など数種類あります。またメーカーによっても違いますので、購入の際は必ずお使いのミシンに適合するかどうかご確認ください。

 

 

<3>針板を交換できない

家庭用ミシンのトラブルでも多く聞かれる「針板の穴に生地が引き込まれて、取れなくなる」という現象。
きっと誰でも経験あると思います。

縫い始めの時や、ニットなど伸びる生地、裏地のような薄い生地の場合に良く起こりますね。
家庭用はジグザグ縫いのために針板の穴が横に大きく開いています。
このために生地が入り込みやすくなってしまうのです。
直線縫い専用の工業用や職業用は穴が小さいので、こういうトラブルはほとんど起きません。
しかも「薄地用針板」という、さらに穴の小さい物も別売り品として販売されています。

それに対し、家庭用にはそういうオプション品はありません。
考えてみれば、そのような針板があったとして間違ってジグザグ縫いをしたら、針が「バキッ!」という事になりますからね。

この「針板の穴問題」の解決策として良く知られているのは、パラフィン紙のような薄い紙を布の下に敷いて、一緒に縫う、という方法です。
薄地や縫い始めなどには確かに有効です。
ただし紙は布のように融通が利きませんから、長い距離やカーブを縫うのには向いていません。

そこで私がやっている方法をご紹介しましょう♪

やり方は簡単。
まず見やすいように押さえを外します。
針板の穴をセロテープでふさぎます。

この時注意していただきたいのは、出来るだけ送り歯にかからないように貼る、という点です。
送り歯がつるつるになったら、布を送ってくれなくなりますからね。
特に両側のメインの送り歯は避けるように。でもあまり小さいとはがれてしまいますから、そのあたりはお使いのミシンに合わせてください。

それから押さえの裏側にも穴を塞ぐようにセロテープを貼ります。

あとは押さえをセットして普通に縫うだけ。

針はセロテープを貫通し、必要最低限の穴だけが開きます。
なので針板穴に生地が入り込むことがなくなる、というわけです。
これは私的にはかなり効果があると思っています。
ただし、これはちょっとしたアクロバットな方法ですから、あくまで自己責任でお試しくださいね^^;

また、まれにセロテープの粘着剤が針や針板に付着してベタ付く場合があるかもしれません。
そのような時は以前ご紹介した「ヒューズアウト」などで拭き取るか、針を交換してください。

 

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家庭用ミシンの課題と対策、長々とお届けしてきましたが、如何だったでしょうか?

一つでも二つでもお役にたてて頂ければ嬉しいです(*^-^*)

 

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